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臆病な自尊心

名古屋の渡辺は博学才穎、平成の末年、若くして名を同支社に連ね、ついで同支社小劇場に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、大学生に甘んずるを潔よしとしなかった。いくばくもなく単位を落した後は、京都、今出川に隠遁し、人と交まじわりを絶って、ひたすらニートに耽った。しかし、両親は容易に許さず、仕送りは日を逐うて少なくなる。彼がその無為無聊の生活の中に、己の自尊心を如何に傷つけたかは、想像に難くない。彼は怏々として楽しまず、狂悖の性は愈々抑え難がたくなった。暫くの後、出町柳まで旅に出、鴨川の畔にパリピを見止めた時、彼は遂に発狂した。丁度夜半、急に顔色を変えて橋の欄干に手をかけると、何か訳の分らぬことを叫びつつそのまま下に飛び下りて、闇の川の中へ駈け出した。彼は二度と戻って来ず、その後渡辺がどうなったかを知る者は、誰もなかった。
その時渡辺は自らの姿の変貌するのを聢と覚えていた。変貌というのはその晩鴨川にて、確かに彼は自分の名前が呼ばれるのを聞いていた。声に応じて橋へ出て見ると、声は闇の中から頻に自分を招く。覚えず、自分は声を追うて走り出した。無我夢中で駈けて行く中(中略)明るくなってから、水上に臨んで姿を映して見ると、既に妖となっていた。
かくして、彼は神出鬼没の妖怪、渡辺孝文へと成ったのだった……


何か書こうとも書けず、無駄に日付がたってしまい(ごめんなさい、本当にごめんなさい)、前回の奈良の締めを引継ぎさらには往年の名分にあやかったものの、尚以って自分の文章はままならない。というか投稿として全然量が足りない気がする。何かついでに書き足さなければ。ヤバイ。
上の文章は当然ですが、中島敦の小説、山月記のものですね。高校教科書に必ずといいってもいいほど転載されている文章でもあります。
高校の現代文といえば、これと夏目漱石の『こゝろ』が有名ですが、やはり古今東西うら若き高等学生の見本となってきただけありますね、どちらもとても綺麗な文章をしています。日本語の妙なる響きを、麗らかに、小説の野辺に鳴らしています。
そんな綺麗な文章を詠むと、ついつい真似をしたくなります。
特にこゝろは、初めて読んだ時に、思わず感動してしまって暫くその言葉使いが文章に出しまいました。やっぱり(誰にとっても無く自分にとってやっぱりなのですが)、日本語の美しさみたいなものには惹かれます。
そういった美意識みたいのものって、むしろ僕なんかより全然、特に演劇をやってるに人は、強く持っている方が多い気がします。自分の世界が強い人っていうのは、そういう人なんだあと感じます。

分量をそこそこ稼いだ所で、次のざねにバトンタッチです!1回生、森ざね(漢字が出て来ない)さんです!よろしくお願いします
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